前回書いたのが2021年2月でした。いつの間にやら随分時間が経ってしまいました。
その後どうなってますかと人に聞かれたのもあり、書いていなかった期間の出来事を書いてみたいと思います。

その後やったこと(影響)

・UA Acousticsのベーストラップの導入(中)
・吸音材の大増量(中)
・スピーカー足回りの一番下に合板追加(小)
・プロの手によるチューン(大)
・その他

UA Acousticsのベーストラップの導入

現在は大変な状況の国ですが、ウクライナにUA Acousticsという吸音材メーカーがあります。Vicousticとかに比べて遥かに安いながら中々良いという評判を発見し気になっていましたが、とっとと買えと背中を押してもらったのでベーストラップのPulseを8個買いました。
今現在もサイトは生きていて更新されているので商売はやっていると思うのですが、日本までのShippingができるかはちょっとわかりません。興味のある方はお問い合わせをしてみると良いかと思います。
Pulsarと似た名前がありますが、私が買ったのはベーストラップのPulse。特性はこんな感じ。

中々対処のしにくい100hzで最も吸うベーストラップとして優秀な特性に見えます。
注文から2週間ほどでどデカい荷物を受け取り、大量のゴミを始末しつつ部屋の正面、スピーカー側のコーナーに4つずつ積み上げて設置しました。
これは改めて思い返すと中々効果があり、低音がちゃんとタイトになったように思います。アタックではなくディケイの不要な伸びをちゃんと取るイメージです。アタックをビシッとさせるという意味ではスピーカーの下のコンクリの方がよっぽど効果ありました。とてもおすすめなんですが、上記の通り今日本から注文できるのかちょっとわからないのが残念です。

吸音材の大増量

ベーストラップによって低音が結構スッキリしたものの、実はずっとヘッドホンではちゃんと聞こえるがスピーカーではうまく聞こえない悩みがありました。
Sade – Skin(Soldier of Love収録)、この曲のスネアと一緒に左から右へシュッと動く音、これがスピーカーだと明瞭に聞こえません。


もちろんスピーカーに近づけばわかりやすくなるんですが、自分の感覚として目の前に広がるキャンバスをできるだけ大きくしたかったので、部屋の後方3分の1辺りがリスニングポイントであり、ここで聞くとよくわからなくなる、ということです。

これにはすごく悩みまして、エコーだろうと思ってそれまでの吸音材の位置を直したり天井に移してみたりスピーカーの置き位置を改めて図り直して置いたりといろいろ試したのですが、どうにもうまくいきませんでした。
自力で解決することが無理に思えてきたので有識者を頼って相談に乗ってもらって色々話した結果、部屋の音を聞いたことがないから今の部屋に対して吸音材が足りているのか適切なのかもわからないけど、推測通りエコーが原因っぽいからエコーをとことんまで殺してみる、つまり吸音材を足してみると良いのではないだろうか、と助言を頂けました。
私はこれ以上入れると吸い過ぎでデッドになりすぎるのでは、とか当時思っていたのですが、実際にドンドコ吸音材を入れてみないと部屋に対して吸い過ぎかどうかもわからないでしょ、という趣旨です。はみ出してみないと境界線は分かり得ないですね。(4畳半の部屋だった時代にGCボード前面4枚は多すぎて音がペラくなった記憶があります)

で、SONEXを大増量しました。結果的に61cm*122cmが15枚分ぐらい入り、GCボードと合わせて部屋の水平方向の壁面積を7割ぐらいは吸音材が埋めることとなりました。高かった・・・。
その結果、部屋の静けさがだいぶ増しまして、先のSkinのスネアもきっちり聞こえるようになりました。やっぱり全体的なエコーだったのだろうと思われます。

また、私の部屋は壁を叩くとボンボンいう太鼓効果バリバリの部屋なのですが、そうした部分に吸音材を貼っておくと結構軽減されます。これも大きいかもしれないです。

スタジオとかの写真っていかにも貼ってますというのは少なく、あっても拡散ぐらいな気がするんですが、そもそも壁全体にGC埋めてあったりするわけで、やっぱり吸音というのは結構な量をしているのだと思います。
とはいえ、プロの方に自分のスタジオはもっと反射がありますね、と言われたこともありますので、自分がどんな音で聴きたいかによって調節するものなのだと思います。このどんな音で聴きたいか、を見つけるまでが道のりの8割と言っても過言ではないんですけれども。

スピーカー足回りの一番下に合板追加

スピーカー周りは上から順にスピーカー、Acoustic Reviveのスタンド、コンクリとなっていました。低音のボワつき対策にコンクリの更に下を色々模索していたのですが、最終的に21mmの合板1畳分を半分にカットして敷きました。
素材による音っていうのは結構如実に出るもので、目安としてはその素材をコンコン叩いたときの音が音に乗るイメージです。木はカラッとしているので明るめの音に一役買っていると思います。

振動対策という意味ではアクリル板もオススメいただいたので試しまして、これはこれでとても効果があるものでした。振動の損失率が高い素材ということで確かに床の揺れが大きく減少したように思いました。ですが、音色という意味で行くと板+チューンの方が自分としては好ましい具合になりました。(チューンの方が大きいかもですが)

プロの手によるチューン

プロの方に部屋を見に来て色々とチューンしてもらう事になりまして(もちろん有償です)、ビシッと前に出てくる音、左右のフォーカスがきっちり合う音を目指して以下のところに手を入れてもらいました。

インシュレーターの追加

現状の音を聞いてもっと中域を前に出すためにはインシュレーターが良さそう、ということで入れました。市販品ではなくて金属素材とゴムシートを貼り合わせたもので、お持ち頂いたものをそのままお借りして同じものを自分で製作。コストで言えば左右6個で数千円でした。
別に特殊なものではないのですが、どの人にも合うというものではないので詳細は非公開。趣旨としてはインシュレーターが出音に与える影響をちゃんと理解して適切なものを組み合わせるということです。そしてこれは自分もまだまだ経験値が足らず語れるほどのことがないです。
自分でもその後色々置いてみた結果としては、黒壇は悪くなかったですが一歩及ばず、某店オススメのソルボセインはビシッと前に出るの対極で合いませんでした。

電源コンセントを挿す場所の吟味

一般人にはマニアックながらオーディオオタクにはセオリー的ですが、やっぱりPCはタップの一番根本が良い。理屈はさっぱりわかんないんですけど、本当に電源タップとか挿す場所で同じPCなのに音変わるんですよね。挿す場所は明確に聞き分けられるかあんまり自信がないっちゃないですが、タップは結構変わると思います。
ちなみに、PCにはFurman PST-8Dというタップを使っているのですが、これはもう一つのタップよりも良かったです。シビアな耳を持つ方ですが、このタップは悪くないんじゃないでしょうか、と言ってもらえました。Furmanよりももっと高い某電源トランスで失敗したあと半ばヤケクソで買ったものでしたが、良くなったと思ったのは気の所為でなくて安心しました。

スピーカーのネジ締め

本当に魔法みたいなんですけど、これが何よりも効いたかもしれません。
具体的に言うと、Ariana Grande – Positionsのローが動いているのが見えるんです。この曲、アナライザで見てみてるとものすごい下までいってて、20hz台に食い込む勢いなんですよね。それの動きが見えるって、純粋な20hz台と言うよりは倍音部分が聞こえるにしても体が感じる低音も増えて、最初ちょっと信じられなかったです。

この通りの低音

IKEAの家具についてたL字六角でスイスイっと短時間でその方が締め直したら、びっくりするほど左右のフォーカスが合いました。それまでのセッティングとか部屋の色々やったおかげで違いがわかったという側面もあると思いますが、これだけでここまで変わるのかと心底驚きました。それまでの私のは締め過ぎだったとコメント頂きまして、ちょうどよい所をちゃんと探して狙わなくては行けないのだなと思いました。

こう書くとむやみに触るのが怖くなってしまうかもしれないのですが、数年レベルでネジに触ってないなら軽く持って指に力を入れず手首の力だけで回して動かなくなるとこまで、というイメージで締め直してみても良いと思います。ダレてる低音が引き締まると思います。ウーハーが必要十分な動きをできるようにしてあげる感じですね。とりあえず全部の所に同じ力をかけた状態から調整をしていくのが良いと思いますので、トルクレンチの使用も良いと思います。神の手はトルクレンチに余裕で勝つそうですが。
ネジは定期的に緩むものなので、ケアが必要になります。その後自分でやってみて今ではある程度感覚がついてきました。
ただし絶対に強く締めすぎてネジやスピーカー本体を壊さないようにしてくださいね、責任は持てませんよ!

コンセント等端子類のお掃除

別に特殊なことをしていないんですが、普通にマツキヨブランドの無水エタノールと綿棒とコットンでお掃除するのみです。なんでかわかんないけど自分が掃除したときよりも音が良くなってるような気がする。
明かしても真似できないので言われたことを明かしますと、「拭きながら指先の感覚でちょうどよい所を探りながらやってる」とのこと。ナニソレェ・・・。
とりあえずその方がやっていた動作だけ真似ていますが、はてさて効果はどうなんでしょうね笑

手持ちアクセサリ類の場所吟味

オカルトっぽいものも含めてアクセサリ系が何点かあったんですが、これの場所を改めて吟味。結果として別にいらないねってことで外したものもあります。まぁこれは人によるし物によるし環境によるしという要素が大きすぎるので割愛。興味ある方は実際にお会いした際にでもオタクトークしましょう。

驚異の耳と記憶

これはおまけなのですが、この方には2度家に来てもらいました。1回目の3ヶ月後ぐらいの2回目、部屋に入って音を聞くなり左のスピーカーのインシュレーターが数ミリずれている、3点支持の1点ずれてる、多分右のやつ、と指摘されました。にわかに信じがたいと思いながら確認すると本当に右のやつが決めた置き場所から確かに1,2ミリ横にずれていました。町工場の研磨職人は数ミクロンレベルを触って判断するとテレビとかでやってたりしますが、音においてもその域の職人がいるのだと畏怖した瞬間でした。

オーディオはオカルトに思える音の違いみたいな話がよくありますが、このレベルの人達が話しているとしたらそれは凡人にはわからないだけ、ということもあるんだなと思います。この経験以降、自分の感覚をもっと信頼してその時全身でどう感じたのか、を意識するようにしています。やはりパッと聞いて良いか否かで大体判断して良いと感じており、その精度を高めるのは日々の研鑽以外にないのだと思います。これを意識し始めてから、必要な対処はしたはずなんだけど引っかかる、みたいなものは速攻でボツにする判断ができるようになりました。加えて、体が良いと感じるまで追い込むという動作につながったと思います。

その他小ネタ集

DACとしてSPL Phonitor xを買ったんですが、作業机に置いておいた状態よりもラックマウントキットでラックに入れるとだいぶ変わったように感じました。プロモーション期間でマウントキットがついてくる時に買ったのはラッキーでした。

DACからアンプへのケーブルの長さで結構変わります。2mと3m試して現在は3mを採用してます。

机の鳴りを抑える必要あり。IKEAの安机なのですが、足が金属製で中が空洞なお陰で、デコピンするとコーンと鳴ります。ゴムシートを巻き付けて強めに縛るといったことを4本の足全部にやったらモニタリングに割りと影響あったと思います。こんな感じで部屋の中でガタガタする、共鳴する可能性があるものは潰しましょう。小さな積み重ねで結構変わると思います。

部屋はきれいにしよう(戒め)。調整したときよりもっ部屋がグチャっとしてたら見た目にもかっこ悪いし音にも影響がある。余談ですがオーディオ評論家の部屋とかたまに雑誌で写ってたりしますけど、とにかくスピーカーが窮屈なぐらいグチャッとした部屋が多いような気がしますけど、なんでなんでしょうね。蛍光灯は音に影響があるからどうこうとか言う前にそうなりたい!という部屋にしてほしいなぁって思っちゃいます。

椅子の高さ、気配ってますでしょうか。一般的なツイーターの高さと耳の高さを合わせるというやつ、あれはあれでいいと思うのですが今は私はそれよりも下です。その方が倍音がわかりやすいかった。いい高さを得たらたった状態で床からの高さを測って覚えておきましょう。なるべくいつも同じ条件で音を聞くようにするとふとした時に違いに気づきやすくなります。

おまけ 失敗集

私の部屋で失敗というだけなんで、これらがダメということではありません。

・Classic Proの吸音材
断り書きをしながら何ですが、これは明確に書いて良いと確信あります。全然効果ないと思います。そもそも耳を近づけても静けさのカケラもないです。これより100均でタオル買ってきて貼るぐらいでいいのでは。見た目はさておき。

・機材への重し
いや、前にこんなことを書いている通り、効果はあるんですよ。ただ、重しは基本的に倍音感が薄れるというのがその後わかってきました。なので、アンプからは外しました。全部やりゃあいいってもんじゃないです。

・前すぎるリスニングポイント
スピーカーに近づくほど直接音が増えてわかりやすくなるんですけど、私の部屋でそれをやるとスカキンの音になっちゃうんですよね。サイズもそれなりにあるスピーカーということもあるのですが、前後左右ちゃんと見える、と目指して適切な位置を探しましょう。

おわりに

もうルームアコースティックは一段落でいいかなと思っています。GCボードを覆うガラスクロスの反射が聞こえるという意見ももらっているのでそのうち布を買って被せてみたいと思っているんですが、ユザワヤ的な所に全然赴かないせいで放置気味です。こうした調整前後を聞いてもらった方には相当良くなりましたねと複数名言ってもらえているので良い環境担になていると思います。
たまに請け負っているマスタリングでも前よりもクオリティを出して狙った所に落とし込めるようになってきたかなと思います。もちろんそれが依頼者に刺さるかは別問題なのですが。

最初は防音目的から始まったルームアコースティック、こうして数年がかりでやっても抜本的な対策にはならない結構大変なものでした。それなりに気合と根性と確かな耳と的確な意見と予算が要る果てしない作業です。やはり大元の部屋そのものが支配的だと思いますので、ガチンコでやったとしても絶望しないように、気を病みすぎないように気をつけましょう。一時期自分は常に不完全な音を聞いているのでは、というような感覚に襲われ続けた時期があったのですが、あれは精神衛生上よくありません。
ガチりたい時、ガチりたい所だけガチっていくぐらいでよいのではないでしょうか。