2023/04/16追記
原材料の銅線が在庫切れ間近だそうです。色々状況が流動的ですが、先に事は誰にもわからないと思うので無闇な問い合わせはお控えくださいね。


基本的に製作ネタの当ブログだけど、今回はガッツリと趣味オーディオの話。

悪魔を超えた悪魔、宮沢鬼龍のような電源ケーブルを作れるらしい。なんとレシピが公開されている。
グルマン氏のオーディオブログ、Monster Audioである。経験値がヤバ過ぎて情報満載は良いのだが同じ土俵に立てる気がしない記事ばかりで異世界を覗く気分で更新を楽しみにしている。

そんなブログで「物凄い音の電源ケーブルが出来た」とのこと。
実際には理詰めの産物ながら、既製品では有り得ないような見た目やバラバラのコード、そして何より傍から見れば狂気にしか見えない蜜蝋で煮る作成工程。そして何よりとてつもない経験値を持つ方が音がいいと太鼓判を押す。
電源ケーブルは要はつなぐだけなので自分にも出来るのではないか?

こんなにオタク心をくすぐるものが他にあろうか。いやない。というわけで作ってみた。

要注意事項、絶対に読め

電源ケーブル、つまりは電気を扱う。よって作成には事故防止に細心の注意を払って頂きたい。
ショートだとか漏電だとか、そうしたことが起きないように絶縁等は注意を払うべきであり、それでも結果お使いの機器が壊れたり、最悪火災が発生しようが私は責任を一切持てないということを最初に宣言しておく。
自作に限らず標準以外の電源ケーブルを使うということには警鐘を鳴らす記事は結構ある。そうした意見も踏まえた上で自己責任においてやること。いいね?

警告としてはこの辺を参考にしてほしい。
https://note.com/gt_sound_lab/n/nc606ece51a32
https://www.audio-sp.com/?p=16798

加えて蜜蝋は絶対に下水に流したりしないこと。家の水道管を詰まらせるようなことはしない。溶かした状態のままキッチンペーパーで吸って捨てる。
加えて蜜蝋を完全に取り去るのは難しいので、鍋とトングもこれ用に買ったほうが良い。

材料調達

材料はサイトに記載の通り。蜜蝋もAmazonで検索して本家の写真のもの。

製造

線材については記載の通り94.5cmでカット。
以下のコツの中にもあるように、まずは多少余裕を持ってカットしてからテープで4箇所ぐらい縛ってギッチリと真っ直ぐになるようにする。

https://audio-monster.com/?p=1901

↑こんな感じに束ねる。

そして蜜蝋で煮る。
友人に黒魔術かなんかしてるのか?と突っ込まれた工程である。


色々なやり方があるようだが、私は湯煎で蜜蝋を溶かし、その中に鍋の大きさに合わせて丸めた線を浸した。傾けたり回したりで全体にくまなく蜜蝋がかぶるようにする。1本分なら買った蜜蝋1枚の3分の2もあれば十分かと思われる。2本一度に作成した際は1枚分溶かした。

厳密には1本ずつやるのがいいんじゃないかなと思われるが、私は4本と5本の束でやった。
鍋から上げたらなるべくくっつかないようにそれぞれの線をある程度離しつつキッチンペーパーの上で乾かす。

乾いたらそれぞれの線のくっついた部分を剥がし、ゴム軍手をはめて皮膜を剥いでプラグにつけていく。

明工社ME2573の穴に5本入るか不安だったが、そんなに苦労せず入る。それよりもSCHURTER 4781の方に5本入れるのが相当つらい。サイコロの5のような配置で最後の1本は端からでなく先に入れた線の間にねじ込むように入れるのだが、だいぶ難儀する。あまりにも難儀するので4本同士バージョンも作ってみたい。

コツにもある通り被膜は結構長めに剥ぐ必要がある。でないと確かに蜜蝋で太さをまして滑りにくくなっている部分が邪魔をする。

これらの過程でもどうしてもあちこちに蜜蝋がくっつくので、見た目にも中々よろしくないし、何より銅線等接触部分にひっつかないように十分留意。

そんな感じで結線すれば完成だが、中々おどろおどろしい見た目である。

バーンイン

自作が初めてなので他の場合もどうかわからないが、このケーブルはバーンインに数日は要する。
作りたての音はそこまでびっくりするものではなかったが、DACで音楽を鳴らした状態で数日経つとバケモノの様に全能力が改善されていき、音を聞きながら呆然とするレベルのものが出来上がった。

音の傾向

とにかくスピード感があり中高域が明瞭。ただ色付け的に明瞭というよりは、本来はこうなのか、今まで滞っていた水の流れがドバッと出てきた、そんな印象である。
とはいえローもしっかりと出るし立ち上がりや引きも速い。音像感もしっかりとある。
今まで使っていたものとかよりは全方位的に良い。

あまりにいいので既に3本作った。

失敗談

線の長さを9本、厳密に、本当に厳密に揃える。
最初作った際は音像感がボケており、当初バーンインでかなり変わるということを把握する前であったがそれでも疑問があった。

疑わしいところは2つ。
1つはプラグがレシピ通りでなく余っている電源ケーブルから流用したフルテックのプラグであり、これによる可能性。
もう製造上の精度、つまりはあちこちの汚れだとか線の長さが揃っていない可能性。

直接相談もさせてもらった所、長さのズレは高周波の位相に致命的であるのでそこが怪しい、とのこと。確かにこのボケは左右から正しく揃った音が出ていない、つまり位相が悪い状態と言われると納得する状態だった。
当初は片方の端ぐらいしか縛らず作っていたが、改めて4箇所ほど縛って並べると±5mm程度は不揃いだった。やはりこういうこと。
市販品というのはこういう所がちゃんと作られており、だから個体差があるとはいえほぼ同じ音に作られているわけだ。

切り揃えて鳴らし、さらにバーンインをすすめると上記の通り呆然とする素晴らしい出音になった。
後日プラグもME+SCHURTERに変更した所、よりシャッキリとするようになった。
フルテックのは音はダメとは言わないが、いわゆるオーディオにありがちなきれいな音で音の立ち上がり数サンプルが抜けているような、引っ掛かりのなさがあった。
歪みがないということなのかもしれないが、自分は音にガッツがほしいのでそれはNG。
図らずしもプラグでここまで変わるというのも初めて体験することになった。

アウトボードに?

当然ながらアウトボードに使ってみても相当に音が変わった。ちゃんと数時間機材を温めてから全く同じセッティングにて録音してみて結果を比較したが、だいぶ違う。
2台連結で2台にこのケーブルを用いても現状よりも良い結果としか言えないと思える状態であり、ケーブルに強い色があるなら2台も使えばそのキャラが増幅されそうなものだが、その点があまり感じられなかった点は驚いた。
過去に他の市販ケーブルで2台に同じケーブルを使った所ちょっとそのケーブルの色が乗りすぎると思って純正ケーブルでこれまでやってきていた。

ただ実戦投入するかどうかはまだ判断中。
今は作りたてだからいいが、このまま音が変わらずにいるのか、耐久性はどうか、等々色々と注意深く見る必要がある。このあたりは市販品はやっぱりちゃんとしているなと思う所。
仲の良い人ならまだしも、長時間安定した作業が求められるプロ諸兄にはおいそれと薦められるとは限らない・・・と思う。少なくとも自分の口からは。

現時点での結論

趣味のオーディオとしてなら大いにおすすめする。音楽を聞くのが5割増しで楽しくなった。
加えてこの様なバケモンみたいな見た目で大半の電源ケーブルを無双出来ると思うと笑いが止まらない。

だがくり返しいうが安全性にはしっかりと配慮をすること。電気を扱うときは資格がいるようなことは持ってないならしない、危ないことはしない、ということを頭の中の第一に置いておくこと。

また、音はこれからもっと変わる可能性がある。現状素晴らしいが、このまま素晴らしいのか、更に良くなるのか、逆にしぼんでいくのか、要経過観察である。

その他、やっぱり自分で作ってみると色々と勉強になるものだ。各パーツが何のためにあるのか理解が及ぶ様になる。だからなんだと言われればそれまでだが、もしかしたら今後のチューニングのときの考慮店になるかもしれないものだ。

未だハンダ付けにはチャンレンジしていないのだが、そろそろ試してみてもいいかなと感じている。
銅線から買って色々作れるということが出来ると、単純に楽しそうである。すぐさま制作に役立つとは思っていない、思えない。その辺はやはり市販品というものはしっかりしている。

追伸

宮沢鬼龍みたいなケーブルだからって、そのうち弱き者になられたら困る。